平成16年度は、第一に本課題に関する資料を収集し、条件を変えることにより分析を進めることを目的としており、この予定に沿って研究を続けている。資料は前年度までに収集した論文等に加え、分析に必要なゲーム理論、数学などの基礎資料を入手し、現在はそれらの資料を中心にして、いくつかの視点から分析手法を構築している段階である。また、これと並列して、第二の目的であるコンピュータシミュレーションを実施するため、関連の書籍を入手し、その手法について検討している。 現段階では研究対象を「拒否権を持つグループがいるときの、拒否権をもつ投票者と持たない投票者」に焦点を当てている。このようなシステムの代表的なものが国連の安全保障理事会である。このシステムは投票ゲームの分野でも、早くから一つの投票システムの事例として評価がなされてきた。また、応用面から見ても、日本などいくつかの国が新たに常任理事国に加わるかどうかが議論されている現在、非常に興味深い例であると考えられる。従来はこのシステムの評価に使われてきてのは主にShapley-Shubik指数であるが、この指数で分析すると、例えば現在の安全保障理事会における常任理事国(拒否権あり)と非常任理事国(拒否権なし)の投票制度上の影響力は100倍以上違うことが知られている。しかし、他の指数を用いると、.常任理事国が非常任理事国よりも影響力が強いという結果自体は変わらないものの、その比は2.5〜10倍などの比較的小さな差異しか見ることができない。本研究ではこのような指数による評価の差異に着目し、まずはこの観点から現在ある指数を特徴付け、その上でより一般的な投票の状況に拡張したいと考えている。
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