本研究では、土地の被災危険性を把握し事前・事後対策に役立てるため、地域の水害に対する脆弱性を明らかにし、情報技術を活用し都市型水害を誘発する時空間情報のデータベース化・解析・表示手法の検討を行う。 本年度は、昨年度に引き続き横浜市において2004年10月に発生した台風22号による水害履歴の時空間情報化を行った。昨年度、対象とした横浜駅西口周辺に加え、本年度は、保土ヶ谷区今井川周辺の浸水被害エリア(床上浸水73棟、床下浸水23棟)について地図化し、航空レーザー測量による高精度の標高データを用いて微地形を把握し、浸水被害との関連性を分析した。また、地域住民や自治体へのヒアリング等をふまえ、ミクロスケール(街区レベル)での浸水危険箇所の地図化手法、危険情報の収集・提供手法のあり方、デジタルアーカイブの利用可能性について検討した。さらに、既設の雨量観測点と台風22号に関する雨量データを整理した。今後、これらのデータを利用し、河川・下水道整備状況、河川ポンプ処理能力、遊水地等の貯留容量や都市開発状況等の社会的背景も考慮し、土地条件図や古地図等の既存の地図情報も参照しながら、水害履歴や危険エリア抽出に必要なデータ精度、汎用性についてさらに検討を行う。 また、建築学会、土木学会、地域安全学会等の研究発表会に参加し、分野横断的視点・地域的視点から都市型水害軽減化のための地域の時空間情報技術に関する知見を得た。さらに、水害以外に土砂災害、地震・津波災害、高潮災害なども対象に、行政や公共公益機関における災害情報収集・提供システム、ハザードマップの整備状況や各種データ等の技術開発・社会動向調査を行い、GISを用いた地域時空間情報提供システムの可能性について検討を行った。
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