多くの実際問題は相競合する目的関数をもつ多目的最適化問題として定式化される。多目的最適化問題ではすべての目的関数を同時に最適化する解は必ずしも存在せず、そのためパレート最適解が導入される。通常パレート最適解はたくさん存在し、その中から目的関数の間にバランスの取れた一つの最終解を選び出すことになる。しかし、工学設計などの実問題では種々の評価関数の形が陽にはわからず、構造解析、熱解析、流体解析等の数値解析によってはじめて設計変数の各値に対する評価関数値が定められることが多い。このような数値解析には多大の計算時間やコストがかかるため、満足のいく解を得るまでに必要とする解析回数は多くなり、従来からよく用いられた最適化手法の適用は現実的に困難である。したがって、最適設計などの問題においてはパレート最適解を求める際、要求される解析数を減らすことが非常に大事な課題である。一方、多点探索ができる進化型アルゴリズムを用いてパレート最適解の全体を生成する手法に関する研究が盛んになるが、得られた解の多様性の維持や最適性の評価法の解決すべき課題がある。 そこで、本年度の研究では一般化包絡分析法(以下、GDEAという)による近似パレート曲面の生成法を提案した。意思決定体の効率性を分析するために提案された手法であるGDEAと遺伝的アルゴリズムを融合することにより、より少ない解析数で、より精度のいい近似パレート曲面を生成することができるようになった。さらに、GDEAから得られる解の情報を活用することで、多様性を維持することができるようになった。さらに、様々な数値例を通じて、本研究で提案した手法の有効性について検証した。
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