研究概要 |
本研究を進めるにあたりエージェントベースモデルの理解と,その検証の妥当性を検討する基礎的なデータを作成することを本年の目標とした.本研究の大きな特徴は,避難シミュレーションにエージェントモデルを採用することにあり,その結果避難者の属性・避難行動の様子を従来の研究よりも細分化することが可能になり,より現実性を高めることができた.一例として地下鉄駅火災時の煙の発生や,誘導なども考慮したモデルへと状況をより複雑化してシナリオを作成し,シミュレーションを繰り返した.これらの研究成果の一部は,安全工学シンポジウムで以下の題名で発表した. (1)増田浩通,長谷川崇,字田川金幸,新井健,MASを用いた地下鉄駅構内における避難シミュレーションモデルの構築,第34回安全工学シンポジウム,pp.169-171,(2004.7) (2)長谷川崇,増田浩通,金栗遼太郎,新井健,避難者救助・誘導員を考慮した避難・救助マルチエージェントシミュレーションモデル,第34回安全工学シンポジウム,pp.177-179,(2004.7) さらにこれらの結果を踏まえ,具体的な公共施設を抽象化した空間モデルを採用し,避難心理学からの知見である「帰巣性」,「向光性」,「開放性」,「追従性」といった避難時の個人特性をエージェントに組み込んだモデルを構築した. またエージェントベースモデルは,モデル作成者の恣意性が高いため,モデルの検証が重要であることから,従来良く用いられているビデオの撮影とともに,歩行軌跡が取れるジャイロ搭載タイプのポイントマンDRMを購入し,研究室内で学生を仮想の避難者の役割を担ってもらい,避難時に人がどのような歩行をするのかを実験した.これらの結果をコンピュータシミュレーションとの比較を行うことで,モデルの妥当性の検証をする手法の確立を検討している.
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