研究概要 |
本年度は研究テーマの最終年であるために,これまでの研究を発展させ総括した.避難者個々のミクロ的な避難行動が,全体的にどのような挙動を発生させるのかを分析することが可能である,エージェントベースモデルを用いて,コンピュータ上での避難シミュレーションを行った.その適用箇所の拡大と,避難行動のより詳細なモデル構築を目指した.具体的な想定例を以下に述べる. (1)都内にはオフィスと住宅地が混在する場所が多く存在しており,そのような地域では通勤や通学によって昼間と夜間の人口には非常に多くの差があるため時間帯別の人口を考慮した被害予測をすることによって、その地域独自の避難計画を作成し、日ごろからその地域を利用する人々に情報を提供し、災害時に適切かつ素早い避難行動を起こせるように住民の意識を促していかなければならない.そのために「住宅密集地区における広域避難」を考慮したモデルを作成した. (2)劇場,サッカー場,多目的ホールなど多くのイベント実施施設において事前に避難誘導を計画し,誘導態勢を整えておくことは重要であるのにも関わらず,関係者のみによる小規模な避難訓練のみの実施,避難誘導の教育のなされていない多くの日雇いのアルバイト係員がイベント会場での警備を行っているのが現状である,との指摘から「大規模イベント施設を対象とした避難誘導」モデルを作成した.その他「観光地における来街者の避難」,「乗換駅における歩行者行動モデル」も同時に研究し,今後の安全な集団移動,群集歩行への基礎研究とした. これらの研究成果の一部は,安全工学シンポジウムにて以下の題名で発表した. [1]増田浩通,新井健,渡部慶之,グループ行動特性を考慮した繁華街地区におけるエージェントベース避難モデル,安全工学シンポジウム2006,pp.97-100,(2006.7) 構築したモデルの妥当性の検証をする手法の確立は本研究テーマの重要な研究視点である.他の研究者からコメントも多数いただいており,今後も検討をしていきたい.
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