研究概要 |
本研究の目的は,自治体の地域防災計画,防災都市づくり計画の策定において,防災性評価の結果,および,それに基づく各種データから計画の最適化,具体化を行う技術を確立することである.具体的には,計画策定の数理学的視点からの同定と解法の確立である.そうすることにより自治体の防災計画をより合理的,効果的にすることができると考える.さらに,これをシステム上に実装することによって防災専従職員が少ない自治体(数万人〜20万人程度の自治体)において適用できる環境を整える. 対象とする具体的な計画項目としては,これまでの計画策定において重要ではあるが,曖昧に定められてきたものを対象とした.これらの計画策定は,最適化問題,或いは逆問題に帰着すると想定されるが,理論的なスマートさを追うが故の単純化せずに,実際の市街地データを利用し,実務で利用可能なレベルで解法技術の確立を目指している.本年度は,行政の職員および防災計画を専門とする実務家との議論を通した支援すべき計画項目の抽出,及び,データ整備とプロトタイプの構築を行った.本年度の成果としては,計画項目として,被災状況に応じた避難所開設・閉鎖の最適化,職員の動員・帰宅計画の最適化,応急対応の拠点的施設(公共施設,空地)の利用計画,活動拠点の空間的な最適化,緊急輸送路の路線選定が抽出され,最適化問題,逆問題としてこうした問題をモデル的にではあるが,帰着させたこと,具体の地域データに基づいたケーススタディが行える環境を整備したことである.現在,最適化問題として解くことのできるレベルと防災行政実務でのニーズとのすりあわせを行っているところである.本研究はこの両者のギャップの存在から出発しているが,事前の想像以上に大きいことが分かった.
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