研究概要 |
申請者のこれまでの研究から、ヒトゲノム上の遺伝子位置及びその構造には偏りがあり、ヒトゲノム構造と機能情報との間に何らかの関連性のあることが示唆されている。そこで、ヒトゲノム上で偏りのみられたhead-to-head遺伝子ペアについて、その機能的意義と進化過程を解明する目的で、以下の解析を行うことを計画した。(1)ヒト遺伝子の発現情報を用いて、遺伝子ペア間の発現パターンの比較を行う。(2)タンパク質間相互作用情報を利用し、ペア間の相互作用の有無について検証する。(3)遺伝子ペア間において何か共通の特徴はないか、機能アノテーション情報を利用して明らかにする。(4)ヒト以外の生物種(マウス、フグ、ホヤ、ハエ、カ、線虫)について同様のゲノム構造の解析を行う。これにより、ヒトゲノム上でみられたゲノム構造の偏りがどのような生物学的意義をもつのか、他の生物種でもこの構造が保存しているか、またそれはヒトに至る進化の過程でいつ頃進化したのか、といった点を明らかにする。本年度はこのうち(1),(3),(4)について解析を終え、(1)ヒトhead-to-head遺伝子ペア間では弱いながら発現組織に相関がみられること、(3)機能アノテーションには特徴的な偏りはみられないこと、(4)この遺伝子構造は哺乳類に特異的にみられるものであり、その他の真核生物にはみられない新しく進化した構造であること、という結果を得、現在論文投稿中である。平成17年度には引き続き(2)の解析を行い、またヒト以外の生物種についても発現情報を利用したヒトとの比較解析を行うことを計画している。同じゲノム構造が保存され、かつ同じような発現パターンを示す例、逆にゲノム構造が変化したために異なる組織特異的発現性が進化した例等を探査することで、ゲノム構造のもつ意味とその進化過程を明らかにすることを目指す。
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