申請者のこれまでの研究から、ヒトゲノム上の遺伝子位置及びその構造に偏りがあることが明らかとなっていた。そこで、本課題ではこの偏りの意義の解明すること(目的1)、さらにこの遺伝子構造の進化過程を明らかにすること(目的2)、を目的として研究を行った。 まず、ヒトゲノム上で偏りのみられたhead-to-head遺伝子ペアについて、成人における組織特異性に関する発現情報を用いて、遺伝子ペア間の発現パターンの比較を行った。その結果、遺伝子ペア間では弱いながら発現組織に相関がみられることがわかった。また、遺伝子ペア間において何か共通の特徴はないか、機能アノテーション情報を比較したが、機能アノテーションには特徴的な偏りはみられないことがわかった。これらのことから、ヒトゲノム構造にみられる偏りと遺伝子発現調節との間に関連性のあることが示唆された。 次に、ヒトゲノム上でみられたゲノム構造の偏りが他の生物種でも保存しているか、それはヒトに至る進化の過程でいつ頃進化したのか、また他の生物種にその生物種固有のヒトとは異なった偏りや特徴がないか、といった点について解明する目的で、ヒト以外の生物種(マウス、フグ、ホヤ、ハエ、カ、線虫)についてゲノム構造の比較解析を行った。その結果、この遺伝子構造は哺乳類に特異的にみられるものであり、その他の真核生物にはみられない新しく進化した構造であること、という結果を得た。 最終年度には、上記の結果をまとめ、国際雑誌に発表した。また日本遺伝学会第77回大会で発表し、Best Papers賞を受賞した。
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