研究概要 |
DNA増幅法であるRCA法を用いることにより、1)少数の細菌細胞、2)培養が困難である昆虫の共生細菌由来の微量のDNA溶液、からのゲノム情報の取得を試みた。 1 少数の細菌細胞からのゲノム情報の取得 ヒト腸内細菌の一種であるBactteroides ovatusの約1,000個の細菌細胞を用いてRCA法によりDNAを増幅した。微生物ゲノム配列決定に用いられるホールゲノムショットガン法に従い、シークエンスデータを取得後、これまでにゲノム配列が決定された他のBacteroides属細菌(B.fragilis及びB.thetaiotamicron)のORF配列をデータベースとしてblastxサーチにより相同検索を行った。 シークエンスした約2000データ中、blastscore60以上でヒットしたデータが全体の約80%を占めた。以上の結果から、少なくとも生きた細菌細胞が1,000個以上あれば、ホールゲノムショットガン法に必要なシークエンスデータを得ることが出来ると示唆された。 2 培養が困難である昆虫の共生細菌由来の微量のDNAからのゲノム情報の取得 キジラミ(psyllids)の共生細菌であるCarsonella ruddiiのゲノムDNAの調製を試みた結果、DNAの収量がショットガンライブラリーを作製するための必要量(1μg)に満たなかった。そこでRCA法を用いてDNAを増幅後、ライブラリーを作製しシークエンスデータを取得した。近縁種と考えられるEscherichia coli K-12の全ORF配列に対してblastxサーチを行った結果、シークエンスした約2000データ中、blast score60以上でヒットしたデータが全体の約40%であった。このことから、取得したデータ中には十分な数のC.ruddiiがのデータが含まれていると考えられる。
|