1)ミトコンドリアDNAの塩基配列の解析から、遺伝的な系統関係が遠いと判断された、家畜ブタ品種およびイノシシ数亜種において、β3アドレナリン受容体遺伝子ORFの完全長配列を決定し、そこに存在する1塩基多型(SNPs)を探索した。その結果、終止コドンの5塩基上流にT(チミン)の1塩基挿入変異を発見した。この変異によりフレームシェフトが生じアミノ酸配列は変異型においてC末側2アミノ酸残基を欠く。このβ3アドレナリン受容体の多型は中国原産の梅山豚・東南アジア在来豚を主な起源とするクラウンミニブタおよび、東南アジア在来豚より検出され、イギリス原産の中ヨークシャー種には存在しないことが明らかになった。β3アドレナリン受容体は脂肪細胞において、ストレス反応やエネルギー収支の調節に重要な役割を担っており、このSNPsによって豚およびイノシシのストレス反応に違いがあるかどうか今後検討を進める。 2)ウシおよびウシ属の野生動物において、βグロビン遺伝子OFRの完全長塩基配列を決定した。その結果、アミノ酸置換を伴う多数の多型を見つけることができた。この多型を比較すると、家畜ウシ集団の中に、野生種と共通の多型が存在する事が明らかになった。このことから、東南アジアの在来牛集団の成立には、ウシとは種を異にする野生種からの遺伝子流入が存在することが証明できた。この結果は、東南アジア在来牛は、ウシにおける遺伝子の多型検出に極めて有効な材料であることを示し、多くの遺伝子における多型の発見が期待できる。 上記の研究成果の一部は、第29回国際動物遺伝学会議(29th International Conference on Animal Genetics ISAG 2004/TOKYO:2004年9月11日〜16日)における招待講演において発表した。
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