研究概要 |
多様な構造を有するインドールジテルペン化合物の酵素による骨格構築に向けて、(1)paxilline生合成遺伝子クラスター中の酸化・環化に関わる酵素遺伝子の発現、及び(2)インドールジテルペン生合成経路における推定前駆体、3-geranylgeranylindole(GGI)の5,1'位重水素標識化合物(GGI-D_3)の生体内への取り込み実験を行った。 (1)報告されている遺伝子の相同性から、paxM、paxCをそれぞれ酸化及び環化酵素遺伝子の候補として発現の検討を行った。Penicillium paxilli(paxilline生産菌)のcDNAを作成し、paxM、paxCの配列から設計したプライマーを用いてPCRにより各遺伝子を増幅した。得られたpaxM、paxCを発現ベクターpET-28aに組み込み、大腸菌BL21を形質転換してタンパクの誘導を行い、予想されるサイズを有する目的のタンパクを得ることができた。 (2)GGI-D_3を3-lithioindoleとgeranylgeranylbromideの反応により合成した(重水素はカップリングの前に導入した)。得られたGGI-D_3をP.paxilli及びEmericella desertorum(emindole-DA生産菌)に投与して、生成したpaxilline及びemindole-DAを菌体から単離し、各々の^2H-NMRを測定した。その結果、各化合物の予想された位置に対応する重水素のシグナルが観測され、推定生合成経路に示された変換反応が起こっていることを明らかにした。標識化合物の取り込み率はそれぞれ0.86%、0.16%であった。また菌体抽出物中からGGIは検出されず、paxilline又はemindole-DAへの変換は速やかに進行することが示された。 以上述べたように、(1)paxillineの骨格構築に関わる候補遺伝子を発現し、酵素反応に必要なタンパクを取得した。(2)GGIがpaxilline及びemindole-DAの生合成における前駆体であることを初めて証明し、かつ、インドールジテルペンはGGIがエポキシ化された後にカチオン中間体を経由する環化反応により生合成されていることを示唆した。
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