光反応性基として利用されるトリフルオロメチルフェニルジアジリン骨格は、光アフィニティーラベルに必要とされる性質を持っているにも関わらず、分子内に必要な置換基を導入するために、その度に多段階反応によるジアジリン骨格形成反応を繰返さなくてはならなかった。そこで、近年進歩の著しい、質量分析計を用いたプロテオーム解析用トリフルオロメチルフェニルジアジリン系光アフィニティーラベルを指向しジアジリン化合物内に安定同位体元素を効率よく導入する反応を検討した。 昨年度申請者らによって確立したhypervalentヨウ素化合物利用したトリフルオロメチルフェニルジアジリンのヨウ素化合物に対しPdを用いた炭素伸張反応を検討したところ効率よく反応が進行することを明らかとした。また炭素-ヨウ素結合へのPd炭素の親和性の高さを利用し、ジアジリンの窒素-窒素二重結合存在下選択的なヨウ素-水素交換反応も可能となり、重水素を用いる事で簡便に安定同位体標識化合物合成への道を開拓した。またジアジリン化合物中の炭素-炭素二重結合選択的な接触還元を種々検討し、可溶性触媒であるロジウム錯体のWilkinson触媒を用いる事により目的とする反応を進行させる事に成功した。この合成法により既に報告者が報告しているジアジリンからフリーデルクラフト反応によるアルデヒドへの変換、それに続くWittig反応による増炭時に13-炭素同位体の導入、形成された炭素-炭素二重結合への選択的重水素付加を行う事で質量分析を指向した光反応性誘導体の合成ルートを開発した。
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