研究概要 |
Terfestatin A (TrfA)は、オーキシン初期応答性の遺伝子発現に対する阻害を指標とするアッセイにより見い出されたオーキシン信号伝達系の特異的阻害剤であり、Terphenyl-β-glucoside構造を有する化合物である。現在までに、TrfAはオーキシンによる応答性遺伝子の発現誘導から、オーキシン依存性の細胞分裂や細胞伸長を拮抗的に阻害することを確認している。今年度までに、TrfAの構造決定と、1,4-diphenyibenzoquinoneを出発物質としたTrfAの全合成が完了しており、論文として報告した。さらに、鈴木カップリングを鍵反応として、phenyl基を各種置換基に変換した誘導体を合成するルートを完成し、各種誘導体を合成することで、TrfAの構造活性相関を解析することができた。また、分子中の糖にかえて、各種アシル基やアルキルエーテル基を導入し、活性発現には、糖分子は必須ではないことも確認した。これらの構造活性相関の知見に基づき、TrfAにリンカーを介して、ビオチンを導入したバイオプローブの合成を完了し、その活性を評価している。また、TrfAの生理活性については、RT-PCRにより、オーキシンにより誘導されるAUX/IAA遺伝子の転写を阻害することを確認し、その阻害メカニズムは、オーキシンによるユビキチン-プロテアソーム系を介したAUX/IAAリプレッサーの分解促進に対する阻害であることが、AUX/IAAタンパクの半減期測定実験より示唆された。
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