研究課題
多くのタンパク質はその機能を発揮するために「適切なアミノ酸」が「適切な時期」に「適切な翻訳後修飾を受けること」が必要である。全タンパク質中の約1-2%が修飾を受ける糖鎖は、小胞体やゴルジ体における糖鎖付加後の糖鎖トレミングの各段階は詳細に検討されているものの、糖鎖修飾されたタンパク質の機能変化については不明な点が多く残されている。また、がん細胞で過剰発現または発現低下しているタンパク質の中で糖鎖修飾を受けるものが多数知られているが、それら分子に糖鎖が付加されるとどのような活性変化が誘導されるかは不明である。上記背景から、筆者はがん細胞の転移・浸潤に関与しているマトリックスメタロプロテアーゼ阻害因子、RECKの糖鎖修飾に着目した。変異体やグリコシダーゼを用いた解析からRECKは、86,200,297,352のアスパラギン残基が糖鎖修飾されていることが分かった。いずれの糖鎖修飾もGPIアンカーとして、細胞外膜への局在には必要なかったが、MMP-9分泌抑制能にはアスパラギン297の糖鎖修飾が必要であった。さらに、RECK発現細胞では、がん細胞の浸潤能が低下するが、アスパラギン297の糖鎖修飾が欠損している細胞を発現させても、がん細胞の浸潤能は低下しなかった。これらの結果より、RECKはその発現だけでなく、糖鎖修飾によってもMMP-9抑制能・がん細胞浸潤抑制能が調節されていることが明らかになった。
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