研究概要 |
本研究の目的は、絶滅が危惧されている干潟の巻き貝3種および普通種2種を材料として、1.架橋工事による成長・再生産・生息密度などへの影響を明らかにするため、個体群特性を3年間継続的にモニタリングすること、また同時に各種物理環境も計測し、生息環境への工事の影響を調査する。2.これらの稀少巻き貝類を、密度、生息ゾーンを変えたケージで囲い込み飼育を野外で行い、種間相互関係・生息場所嗜好などの基本生態を明らかにして、保護策をたてることである。 3年間の個体群動態モニタリングの初年度として,その定量採集方法を確立した.とくに今年度は,絶滅危惧種であるヒロクチカノコガイに注目し,その生活史と生態を調査した.秋の大潮時に,吉野川住吉干潟のヨシ原内に70カ所のサンプリング地点をランダムに設定した.それぞれに地点に0.1m^2のコドラートを設定し,深さ5cmまでの底質を2mm目のふるいでふるいながら,コドラート内にいる生物をすべて採集した.採集した生物は実験室に持ち帰り,同定後,体サイズ,乾燥・軟体部焼却重量を測定した.また同時に生息場所の物理環境を測定するために,直径10cmのコアを用いて,コドラート内の砂を採集し,粒度分析により土粒子組成をあきらかにした.また,ヨシの密度,含水率,落ち葉の量,高低差も同時に測定した. この結果,ヒロクチカノコガイの個体群体サイズ組成,寿命,成長,分布密度があきらかになった.また物理環境要因とヒロクチカノコガイの密度を共分散構造分析し,それらの関係を考察した.なお,この詳しい結果は,日本貝類学会平成十七年度大会(平成17年4月16日,西宮市貝類館)において,口頭発表予定である.
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