本研究の目的は、ニジェールの地域経済の安定性に重要な牧畜に着目し、フラニの移牧ルートを解明することにある。広大なサヘルを移牧する牧畜民フラニが、どのようなエコロジカル・ゾーンを選択し、家畜群の放牧を実践しているのか、GPS(緯度・経度測定システム)とGIS(地理情報システム)、RS(リモートセンシング)を活用することによって解明しようと努めている。現地、調査村において植生調査を実施すると同時に、降水量や気温計を設置し、気象条件の観測を開始した。また、ランドサットTM-7号の衛星画像の解析と、植生の季節変化と経年変化、およびエコロジカル・ゾーンの動態を把握し、フラニの牧畜民が飼養するウシの首にGPSを設置し、1時間ごとの位置情報を記録しつづけている。また、2004年7月にはフラニのウシ放牧に同行し、草地の環境認識や牛群の管理、地名の情報などを調査した。収集した移牧ルートの位置情報は現在、GISソフトによって分析しており、ランドサットTMの衛星画像と重ね合わせることで、次年度には牧畜民のフラニがどのように草地を認識し、ウシを連れて、移動しているのかを明らかにし、干ばつに対する牧畜民の環境適応を解明している。
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