ボストン市ノース・ドーチェスター地区に関する基礎データの収集と関係組織(例えば、議員、警察、コミュニティポリス、裁判所、弁護士、ヘルスセンター、介護・養育・保育施設、ソーシャルワーカー、商工会議所、コミュニティセンター、教会・寺院、学校、図書館、ローカル/エスニックメディァ、シビルソサエティ系NGO・NPOなど)とのネットワークづくりにおいて進展があった。特に、この地区の開発のローカルイニシアチブを支えているNPO組織とパイプが構築できたのが大きかった。全米でも注目を集めている「模範事例」であることが、その組織、そしてその地域の「誇り」になっており、今日に至るまでの過程のドキュメンタリービデオも制作されている。こうした点がもつインパクトは従来、あまり分析において重視されてこなかったが、シビルソサエティの分野でも「広報」や「イメージつくり」という課題が着目されているので、今後の調査・分析に十分勘案したい。 また、ボストン以外にも、ポートランド市やロサンゼルス市、ロングビーチ市などにおけるコミュニティ再生の現場を視察する機会に恵まれ、上記の事例の考察にあたって有益な比較的視野を広げることができた。どの事例も扱っている分野や手法は異なるが、現代アメリカにおけるソーシャル・キャピタル(社会関係資本)の欠乏にともなう「恐怖」がベースになっている部分が多い。「制度」としての民主主義は整備されているが、それが本当に「実体」に反映されているのか、今後、文献研究などを通して考察を深めてゆきたい。
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