本研究の目的は、北朝鮮の新聞、放送、映画などのメディアにおいて、「日本」がどのように表現され、認識され、構築され続けているのかを詳細に分析することによって、そのような「日本認識」が、北朝鮮の自画像=ナショナル・アイデンティティとは、どのように結ばれているのかを探ることにある。具体的な研究課題としては、第一、北朝鮮の主要なメディアにおける「日本関連表現」を可能な限り収集し、その量的な推移およびそこに表われている認識の変遷を探る。第二、その「日本認識」を鏡とする「自画像=ナショナル・アイデンティティ」の推移、変遷についても考察することにある。初年度の研究は、主に文献を中心として先行研究のレビューに展開した。思想論および政治学などの分野の北朝鮮研究および社会主義のメディア理念及び実態、および北朝鮮のメディア理念、制度、番組、オーディエンス動向などに関する先行研究の整理を行い、この作業は今後も引き続き取り組んでいく。また、日本国内および韓国、そして米国において、資料収集および専門家インタビューを実施した。日本国内においては、在日朝鮮人の関係者および団体を中心に随時、聞き取り調査を展開し、韓国現地調査では、統一部関係組織などを訪問し、資料収集およびインタビューを行った。また、米国調査では、主要大学の東アジアおよびコリア研究組織および研究者を訪問し、研究の状況について意見交換および今後の研究ネットワークについて具体化を図った。併せて、北朝鮮のメディアの現状(理念、制度、番組、視聴動向など)について、最新の動向に関する資料を集めつつ、また日本国内で入手可能な北朝鮮の新聞、放送などの内容分析のデータの収集を行った。一方、本年度中に計画していた北朝鮮現地調査は、実施が困難であったが、来年度中にも可能性を打診しつつ、中国などの経由ルートを通じて、現地の状況を把握できるようにしたい。
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