研究概要 |
1.レズビアンアイデンティティの可視性についての発表(King's College, London, Queer Matters Conferenceにて) <発表内容>日本のレズビアンにおけるタチ・ネコというアイデンティティは視覚よりもむしろ性的行為に焦点をあてたジェンダー区分であり、ジェンダーの視覚的表象のかく乱を通じてヘゲモニックな規範への抵抗を模索する従来のクィア理論によっては、その政治的可能性を十分に説明しきれない。ジェンダーの視覚表象のパロディに重点を置く90年代のクィア理論の中心戦略に加えて、外見・身振り・発話などを通じたアイデンティティ主張が相互に矛盾をきたすような、パラドックスの戦略の可能性を理論化することが望まれる。 <フィードバック>この学会においては、ホンコンやニュージーランドに拠点をおく研究者からも、多様なアイデンティティ表象を英米の枠組みで理解することに対して疑問が提出され、個々の歴史的・政治的地点におけるアイデンティティ表象とその政治戦略について、より緻密な分析と理論構築の必要性が確認された。これをふまえ、下記2で述べる平成17年度の国際学会に向けて具体的な活動と意見交換が開始した。 2.平成17年度アジア圏LGBTQ学会(正式名称:Sexualities, Genders & Rights in Asia)開催に向けた意見交換と発表 7月開催予定の上記学会に向けて、ロンドンでの学会の問題点を踏まえつつ「アジアにおけるクィアと英米クィア理論とのかかわり方」についてアジア・太平洋圏に拠点を置く研究者と意見交換、クィア理論の英米中心主義を批判しつつ、安易な地城的特異性の主張を避ける必要があるとの認識に基づき、Inter-Asia Cultural Studiesに上記1の学会についての論考を発表。 3.ジェンダー化された言語使用と非視覚的アイデンティティ主張については、日本の女性作家による小説やエッセイ、漫画などを収集中であるが、明確な理論化にはまだ至っていない。これについては研究の途中成果を上記2の学会にて発表予定。
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