研究概要 |
本研究は,男性が保育職に参入する場面に着目し,女性職を「女性職」たらしめるものを追究することを目的とする.「保育職」=「家事育児の継承職」=「女性職」という認識枠組の維持変容のメカニズムを浮きぼりにすべく,今年度は下記(1)から(3)の調査を実施した. (1)男性保育者が勤務する保育所でのフィールドワーク--男性3名女性20名余が働く保育所で,約1ヶ月半のフィールドワークを実施した.調査では「保育職」=「家事育児の継承職」=「女性職」という認識枠組がたちあらわれるさまに着目した. (2)女性保育者・保育所所長に対する面接調査--「保育職」=「女性職」という認識枠組に照準をあてた聴き取り調査を,保育所所長と女性保育士11名を対象に複数回実施した. (3)男性保育者に対する面接調査--男性の保育職参入の是非が問われたとき、男性保育者はどうこたえるのか.全国に散らばる,世代の異なる男性保育士13名に聴き取り調査を複数回実施した. (1)〜(3)の調査で得られたデータについて,男性の保育職参入の是非が問われる場面に照準をあてて分析を行った.男性の保育職参入に否定的な人々が行うのは,男性保育者を「保育者」-「赤ちゃん」というカテゴリー集合から追い出すことで,「保育者」と「女性」という二つの社会的カテゴリーの関係を結びつけ「保育者」と「男性」との関係を切り離すことであると分かった.「保育者」と「女性」との関係を結びつけるために用いられていたのが,「保育所」=「家庭」という認識枠組であった. 現在,調査成果を整理するとともにフィールドワークと面接調査を引き続き実施している.加えて,男性の保育職参入に肯定的な人々の語りの分析,男性保育者の語りの分析,「保育所」=「家庭」という認識枠組と「女性職」の関係について考察を行っている.
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