本研究の初年度である16年度は、国内外のヤコービおよびドイツ観念論成立史にかんする文献を精力的に収集・講読することに努めた。そのため8月末から9月中旬にかけて、ドイツのハレ=ヴィッテンベルク大学、エアランゲン=ニュルンベルク大学を中心に、ヤコービおよびヘルダーに関する文献を多数収集した。 そしてその成果を、16年10月に早稲田大学で開催された社会思想史学会第29回大会において、「フリードリヒ・ヤコービのスピノザ解釈-ドイツ観念論哲学の一源泉」と題して発表した。この発表にもとづく討論を通じて、ヤコービの思想を、彼の友人であり、また論敵でもあったヘルダーやゲーテとの関連で検討する必要性を認識した。そのため秋以降は、彼らのスピノザ受容を、18世紀後半のドイツにおけるスピノザ受容という大きなコンテクストのなかで解明すべく努めた。 その過程で、彼らがスピノザを受容する以前に影響を受けていたシャフツベリの存在に気づき、ドイツにおけるスピノザ受容を思想的に準備したシャフツベリの思想を解明する必要性を感じた。そこで17年3月には、イギリスのオックスフォードにおいて、シャフツベリからスピノザを経由してドイツ観念論にいたる思想的発展に関連する英語文献の収集に努めた。 なお本年度の研究成果は、17年4月に東京大学で開催されるスピノザ協会第16回総会において、「18世紀末ドイツにおけるスピノザ復興-ヤコービとヘルダーのスピノザ改釈」というテーマで発表する予定である。
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