本研究の2年目である17年度は、スピノザ協会第16回総会(4月2日、東京大学)において、16年度の研究成果を『18世紀末ドイツにおけるスピノザ復興--ヤコービとヘルダーのスピノザ「改」釈』と題して発表することから始めた。この発表にもとづく討論で、18世紀ドイツにおけるスピノザ受容について多くの有益な示唆を得ることができた。また、5月下旬の日本哲学会第64回大会(5月22日、一橋大学)でも『生きた全体における個体性の問題--ヘーゲル「1800年の体系断片」の一解釈』というテーマのもと、ヤコービの反省哲学批判および信仰哲学を青年ヘーゲルとの関連で取り上げ、ドイツ観念論成立におけるヤコービの意義を明らかにしようとした。 その後、ヤコービやヘルダーの関連文献を読み進めていくうちに、彼らのスピノザ「改」釈は、なによりも彼らとライプニッツとの関係から理解されることが明らかになった。そのため8月末から9月中旬にかけて、18世紀ドイツにおけるライプニッツ=ヴォルフ学派の拠点であったハレ=ヴィッテンベルク大学において、ヤコービとヘルダーに影響を与えたと思われるライプニッツ=ヴォルフ学派の関連文献を多数収集した。 他方、昨年度の研究において明らかになったシャフツベリの役割を確定するため、本年度も18世紀ドイツにおけるスピノザ受容を思想的に準備したシャフツベリ関連文献の講読を進めた。その過程で、シャフツベリからスピノザを経由してドイツ観念論にいたる思想的発展を、国境を越えた幅広い思想的文脈から理解する必要性を感じ、18年3月にイギリスのロンドンにて関連文献の収集に努めた。
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