研究最終年度となる平成18年度は、これまでの研究成果をまとめ発表することが中心的な課題であった。 1.学術雑誌『理想』への寄稿 学術雑誌『理想』から和辻哲郎特集号のための寄稿の依頼があり、和辻の超越観念については本研究でも大いに着目するところであったため、論文「和辻哲郎における死の問題」を書き下ろした。 岩波文庫から新たに刊行された和辻『倫理学』の「解説」(熊野純彦)でも同論文について言及がなされ、一定の成果を収めたものと考えている。 2.儒教文化研究所での学会発表および寄稿 成均館大学(韓国)の儒教文化研究所から、「17世紀東アジア儒教思想の比較研究」をテーマに開催される学術大会での発表依頼を受け、「伊藤仁斎における天について」を発表した。また、当日の討論を踏まえて論文を作成し、寄稿した。同研究所発行の『儒教文化研究』韓国国内版に韓国語訳が、国際版に中国語訳が掲載されている。日本語論文については、紙幅の都合もあったため、今後、更に内容を充実させた上で、おって発表する方針である。 3.講談社からの著書の刊行 講談社が新たに「再発見 日本の哲学」(仮題)のシリーズ刊行を予定しており、折口信夫に関して300枚程度の分量で、一冊書き下ろして欲しいとの依頼を受けている。折口については、本研究でも大いに着目するところであり、現在、170枚程度まで執筆が進んでいる。平成19年度中には書き上げ、刊行する予定である。 以上、3年間の研究期間で、論文4本と学会発表2本の成果が果たされ、単著1冊の刊行の目途が立った。また、そうした研究成果が日本倫理思想史研究に携わる他の若手研究者から一定の支持を得、平成19年度から、新規で科学研究費総合研究(C)の申請へと発展し、交付の内定を受けることができた。総じて、充実した研究活動であったと言える。
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