1.古代ギリシアにおいて特に研究主題と関連すると思われるテクストと、現代哲学におけるrationalityをめぐる研究のうち特に重要と思われるものをリスト・アップし、このリストに基づき、古代ギリシア哲学研究および近現代の、国内外の関連図書資料を選定・購入した。そしてこれらの文献を概観した。この作業を通じて、研究の具体的方針を確立した。研究方針を確立する際に重要な示唆を受けた文献のうちに、B.WilliamsのTruth and TruthfulnessとD.DavidsonのProblems of Rationalityが含まれる。 2.確立された研究方針に沿って、プラトン、アリストテレスの理性・合理性概念を集中的に研究した。特にJ.Cooperの研究からヒントを得た。 3.国外ではドイツのヴュルツブルク大学、国内では東京大学、慶応義塾、中央大学、聖心女子大学に出張を行ない、有益な討議を行なった。 4.電子メール等による意見交換も活発に行なった。特に、プラトン初期対話篇の田中伸司(静岡大学)、中澤務(関西大学)による両研究について、両氏および千葉恵(北海道大学)、土橋茂樹(中央大学)と行なった討議は研究に寄与するところ大であった。 5.論文「アリストテレス『詩学』の「筋立て」・「行為」の概念を通して見る、ひとの生」は、古代ギリシア、特にソクラテス、プラトン、アリストテレスの思索の中心課題であった「ひとの生」というものが、先ずもってロゴス化される場面がどこにあるのかを考察し、アリストテレス『詩学』の、「筋立て」・「行為」の概念がその鍵となるという主張を行なった。ひとの生総体の合理性の所在に光を投げ掛け、古代ギリシアの理性・合理性概念を解明する新しい視角を提示した。 6.本研究のウェブサイト開設のための準備作業を、大学院生の助けを借りつつ行なった。
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