研究概要 |
今年度は昨年度に引き続き、現象学と精神分析の双方から大きな影響をうけつつ自らの哲学を展開したフランスの哲学者モーリス・メルロ=ポンティが、現象学者という立場からフロイトの読解に踏み込んだコレージュ・ド・フランスの講義録『受動性』における所論の検討を中心に、精神分析と現象学の関係について考察を進める一方で、分析哲学の議論、とりわけウィトゲンシュタインの後期の言語論についての検討を始めた。主として検討したのは、精神分析に対するウィトゲンシュタイン自身の立場とそれに関するP・L・アスーンらの研究、ウィトゲンシュタインの影響下で分析哲学と精神分析の関係についての議論を展開したジョン・ウィズダムらの議論、およびオースティンをはじめとする言語行為論の論者の所論である。また精神分析と分析哲学の関係について、フランス国立図書館で資料調査をおこなうべく、短期の渡仏をおこなった。またこれと平行して、精神分析の分野において、言語の存在をめぐる弁証法のなかで主体の性的な構造化が成立するとしたジャック・ラカンの所論を検討し、これを論文「言語から性へ-欲望の弁証法における「幼児の性理論」の位置をめぐって-」の形で発表するとともに、言語の存在を支える間主観的な構造の分節化において重要な役割を果たした視覚装置、とりわけ絵画をめぐるラカンの議論を検討する発表「鏡から『メニナス』へ-ジャック・ラカンによる言語の中でのイマージュの再定義」("Du miroir au Meninas-La redefinition de l'image dans le langage chez Jacques Lacan")を、国際学会La lettre et l'image, nouvelles approches, Journees d'etudes organisees par CEEI et UTCP, novembre 2005にておこなった。
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