グイド・レーニ(ボローニャ1575-1642年)らカラッチの後継者たちは、多くの歴史=物語主題をてがけた。彼らはその着想において、同地の文学アカデミーであるアッカデミア・デイ・ジェラーティならびにアッカデミア・デイ・セルヴァッジの詩人たちから、アドヴァイスを受けていたことが知られている。わたしはこれまで、画家レーニと、リドルフォ・カンペッジやジョヴァンニ・カッポーニら、これらの文学アカデミーを代表する詩人たちとの関係について、考えてきた。今年度は、わたしたちの画家とその同時代のボローニャの文学をめぐる問題についてさらに広くかつ深く検討するために、とくにつぎの視点から研究をおこない、成果をえている。 (1)詩人=歴史家のカルロ・チェーザレ・マルヴァジアの美術史叙述についての研究。最初にしてもっとも体系的な「グイド・レーニ伝」を書いたこのマルヴァジアは、自身アッカデミア・デイ・ジェラーティの会員としてレーニの世代の詩人たちとも直接にかかわっており、彼らの活動そしてその画家たちとの関係について多くのことを伝えている。レーニがどのような文学的環境において作品を生みだしていたのかを知るために、主著rフェルシナ・ピットリチェ』(ボローニャ、1678年)はとりわけ役立つ。ボローニャ市立図書館に所蔵されるその原稿(Ms.B.16-17)をも参照しながら、その詳しい読みを試みた。 (2)画家ジョヴァンニ・ルイージ・ヴァレージオについての研究。グイド・レーニと同じカラッチのアカデミーに学びながら、詩人として自身アッカデミア・デイ・セルヴァッジに属したこのヴァレージオは、同時代における美術と文学との関係というテーマにとって鍵となる人物である。その生涯にかんする基礎的なデータを収集・整理し、また現在確認されるその絵画・文学作品を網羅的に調査した。その結果は、ひとつの研究書としてまとめている。
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