本研究の目的は、フランズ美術アカデミーの主催した「ローマ賞作曲部門」について、その成立(1803)以降フォーレによる大改革(1905)を経て廃止(1968)にいたるまでの165年間のうち、賞の授受について歴史的な評価の分かれる1803年から1905年までの約100年間を対象とし、当該期間における「ローマ賞作曲部門」の制度的枠組の変遷過程を調査・一覧化したうえで、賞の授受にそれぞれの立場から向けられてきた批判的言説について、.その当否を問うことにある。 本研究計画期間(3年間)には「ローマ賞大賞」選抜プロセスの変遷を明らかにしようとするものである。過去2年間の調査に基づき、本年度(〜平成19年3月31日)は、以下の2点を実施した。 (1)ローマ賞作曲部門の制度調査のため、メディチ荘(フランス学士院ローマ支部)を訪問し、1873-1901にかけて.の受賞者留学提出作品についての「メディチ荘館長レポート Rapport sur les Envois de Rome」を、デジタル写真および転写により記録した。主に書体の問題により読解ないし解読の作業に多くの時間がかかったが、今回の調査および資料集成は、メディチ荘司書の関心を招き、転写版献呈の依頼を受けた。現在、紀要の報告欄へ投稿するために、原稿準備中である。 (2)大英図書館にて学術書を調査した。これは、平成16年度の調査で、美術アカデミーの建築部門および彫刻部門の動向と、ローマ賞作曲部門の動向についての関連予測を、平成17年3月に日本音楽学会にて口頭発表したが、このときの専門家との議論をふまえ、問題を一層浮き彫りにするために行った調査である。調査結果については学術誌にて報告するために、原稿執筆中である。
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