本年度は、鎌倉時代において清凉寺式釈迦如来像が坐像として制作される場合の研究を昨年度に引き続いて行い、研究に必要な基礎的作業と、研究の総括を行った。 まず、昨年度に引き続いて、清凉寺式釈迦如来像が、鎌倉時代に模刻される例について、文献資料調査をもとに基礎資料収集を行った。また、関連する作例について、実地調査を行った。その上で、研究成果を総括した。 その結果、清凉寺式釈迦如来像の図像が坐像形式に完全に変換されて造像された例は、現存するものでは1例のみしかないことと、頭髪・服制など部分的に坐像形式に採用する例は、数例存在することが判明した。 本研究の総括として、これら清凉寺式釈迦如来像の図像を坐像形式に採用した作例の造像意図は、従来論じられてきた「生身仏」という概念に基づきながら、とくに釈迦如来像においては仏教の根本祖師としての意味づけを行うためであったことと考えられることがわかった。さらに、部分的にであれ、清凉寺式釈迦如来像の図像を採用することは、他の如来などと釈迦如来像との相違を際だたせるための記号として極めて有効に働いたこと、さらに、清凉寺式釈迦如来像の図像をそのまま坐像形式に変換したものは、清凉寺の原像とはやや違った意味付けを帯び、仏教そのものの象徴として坐像形式にあらわされたのではないか、との推論に至った。
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