本研究は、英国国会議事堂のゴシック・リヴァイヴァル様式のデザインに焦点を当てることで、従来十分に検討されてきたとは言えない問題--なぜ19世紀の英国においてゴシック・デザインが「英国性」の表現として認知され得たのか--を掘り下げて探求したものである。本年度は、昨年度に引き続き主として英国国会議事堂のデザインに見出される「英国性」の表現、およびゴシック主義者ピュージンが英国国会議事堂の建設に果した実際の役割について検討を行い、研究成果の発表に努めた。 研究成果の発表は、"‘Regular'Gothic as the English National Design Paradigm : The Realization of Englishness in the Barry-Pugin Design of the Houses of Parliament"と題してInternational Design Congress-IASDR 2005において研究発表を行った他、Proceedings of International Design Congress-IASDR 2005に同タイトルの論文(9pp)を発表した。この発表および論文では、英国国会議事堂という19世紀イングランド最大の公共建築のデザイン上の特徴に、当時のイングランド建築界を席巻していた古典主義様式とゴシック・リヴァイヴァル様式との「様式戦争」の影響と、特定の様式に対する偏向を嫌うイングランド建築特有の様式観の影響を見出し、そのデザインに「英国(イングランド)性」の表現を指摘した。また、英国国会議事堂の設計をめぐる二人の設計者、チャールズ・バリーとA・W・N・ピュージンの奇妙な協働関係についても、「イギリス国会議事堂のゴシック--チャールズ・バリーとA・W・N・ピュージンの協働」(『聖学院大学総合研究所紀要』33号、2005年、464-489頁)にまとめた。
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