本年度はまず、昨年度より進めてきた南あわじ市淡路人形浄瑠璃資料館所蔵浄瑠璃本調査の成果として、同館の浄瑠璃本目録のうち写本分を担当し、「II 外題別浄瑠璃本索引目録 写本の部」を執筆、その中で「館蔵浄瑠璃写本の概要」について記した(『淡路人形浄瑠璃資料館所蔵資料目録1 浄瑠璃本』平成17年4月発行)。また兵庫・徳島両県の各資料所蔵機関における淡路座旧蔵浄瑠璃本の所蔵状況をほぼ確認したので、それらの資料をもとに浄瑠璃作品研究を進め、特に淡路座独自の作品『敵討肥後駒下駄』の成立論を「近世後期淡路座の人形浄瑠璃-『敵討肥後駒下駄』の成立-」(『説話論集』第15集所収、平成18年1月、清文堂出版)としてまとめた。併せて同論文の中で、天保三年大阪初演の人形浄瑠璃『生写朝顔話』のうち五段目相当部分は淡路座によって創作され正本刊行以前に先行上演された可能性が高いことを指摘した。 以上は主に昨年度までの調査をもとに、研究成果をまとめていったものである。今年度はこれに加え、新たな資料調査先として、香川県立図書館・文書館、山口県文書館を訪問し、淡路座に関連する所蔵資料の調査・収集を行った。このうち香川県立図書館・文書館では、香川県下の淡路座興行に関する記録につき、資料所蔵先等の情報を得たので、今後更に調査を続行する予定である。また山口県文書館では、徳山毛利家文庫の藩政資料に残る淡路座興行記録の調査を行った。 こうした資料調査と並行し、以前より調査を進めていた徳島県立文書館では、近世後期淡路座の興行を記録した資料として知られる『元木家記録(かどや日記)』を同館所蔵のマイクロフィルムにより再調査し、既紹介の遺漏を補うための準備を進めた。これについては来年度に資料紹介の稿を発表する予定である。
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