本年度は研究課題の最終年度であるため、主にこれまでの資料調査をもとに、研究の取りまとめを行った。まず前年度から取り組んでいた作業であるが、『元木家記録』徳島県立文書館蔵マイクロフィルム(原本は同館に寄託予定)から淡路座の興行記録を抽出し、これを資料紹介「『元木家記録』の淡路座興行記録」(『演劇研究会会報』第32号)としてまとめた。作品研究としては、淡路座によって改訂が加えられた作品について考察を加え、「近世淡路人形座における改作上演」として口頭発表し(大阪市立大学国語国文学会総会2006年7月9日)、その内容を論文「近世淡路人形座における作品改訂」(『人文研究』第58巻)にまとめた。また近世淡路人形座と大坂興行界との関係を考察し、「近世淡路人形座と大坂」として口頭発表(大阪市立大学国際シンポジウム分科会「都市に対する歴史的アプローチと社会的結合」2006年9月30日)、同分科会報告書に原稿化した。 徳島県立文書館酒井家文書に残る淡路座興行記録の報告、及び新たな地域への資料調査等も予定していたが、上記とりまとめを優先させ、それに関わる調査を行った。淡路座における作品改訂をより具体的に確認するため、南あわじ市淡路人形浄瑠璃資料館や兵庫県立歴史博物館等を訪問して淡路座旧蔵浄瑠璃本を再調査し、その成果を上記「淡路人形座における作品改訂」に盛り込んだ。また上村源之丞座の座本引田家の文書(現在引田家所蔵)について、紹介者の中西英夫氏より教示を受け、未紹介分の原資料写真を借覧するなどして、そこから判明したことを上記「近世淡路人形座と大坂」に取り入れた。 以上、研究課題の最終年度として、調査の取りまとめが中心となったが、当研究によって、これまで研究の乏しかった近世淡路人形座の活動を人形浄瑠璃史の中に位置づけていくための基礎作業ができたと考えている。
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