平成16年度の研究計画として、申請者が掲げていたのは「新声社出版物の基礎的研究の充実」であった。本年度は、新声社出版物の暫定的な出版総数を調査し、そのうち1/3程度の出版物を直接閲覧し基礎調査を行った。さらに複写・マイクロフィルム等での閲覧を行ったものを含めると、1/2弱の調査を行うことができた。これらの調査を通じて、『新潮社一〇〇年図書総目録』に掲載されていない出版物も、複数確認することができた。しかしながら、新声社出版物の総数については、あくまでも暫定的で、継続調査によって精度を高めていく予定である。また調査過程で、新しい問題として顕在化してきたものに、佐藤儀亮が新声社を売却した後の出版物のみならず、旧新声社出版物の紙型が他の出版者の手に渡ることで、出版された異本の問題があった。これらの異本について、今時計画の3年間でその全貌を悉皆調査することには、期間的な困難があるが、書誌情報を得られるかぎり、記録していく方針とした。 今年度から来年度にかけての研究方法上の課題としては、一冊ごとの書誌情報をどの程度まで詳細に記述していくのか、という課題が、最も大きなものとなる。この課題については、平成17年度中にフォーマットを確定し、書誌情報をさらに蓄積していく予定である。なお、平成16年度の研究においては、基礎的研究・基礎的情報の収集に終始し、本研究課題に基づく学術論文を公表できていない。こうした点もクリアしていくことも、平成17年度への大きな継続課題となろう。
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