1伝本調査 和鋼博物館・刀剣博物館・内閣文庫・天理図書館等の所蔵資料の調査を行い、刀剣伝書および伝書の生成と展開に関連する書物群の伝本調査を推進した。その成果は、書誌カードとして蓄積したものをもととして、随時パソコンに入力した。また、デジタルカメラでの撮影、もしくは紙焼き写真の形で原本の写真を収集し、伝本分類作業の基とした。 2「室町期刀剣文化関連資料集」の作成 室町期を中心とした文学書・古記録・古文書類から刀剣文化を形づくる諸記録を抜粋し、資料集づくりのための基礎データを収集・蓄積する作業を続けた。本年度は、おもに兵法・武家故実書や、室町軍記・お伽草子を中心とした文献を対象として、当該調査を進めた。 3各伝書および伝書所収説の分析 本年度は特に「銘尽」と総称される伝書群の中から、『鍛冶名字考』・『長享銘尽』・能阿弥本系『銘尽』をとりあげ、その内容の比較対照や個別説の由緒について検討を加えた。軍記物語諸作品との関係について、『保元物語』『平治物語』と刀剣伝書との関係をとりあげ、これらの物語とは異なる独特な名刀関連説が中世社会には幅広く存在していたこと、そうした意味で、軍記物語に記された話が必ずしも当時のスタンダードとはいえず、これらの存在感の大きさを前提とした文学史理解を改める必要があることを明らかにした。これについては論文を公表し、続稿を準備中である。
|