ディケンズの書簡集(CD-ROM)や編集雑誌Household Words、All The Year Roundを購入し、ディケンズ作品に散見される「自然発火」、「動物磁気」、あるいは「催眠術」といった主題を考察した。その成果の一部を、ディケンズ・フェロウシップ日本支部平成16年春季大会(2004年6月4日於英国大使館)シンポジウム「ディケンズにおける想像力の原点を求めて」にて、議師として「Martin Chuzzlewitを中心として」の題目で口頭発表した。次いで、会場の研究者との意見交換をふまえて、『ディケンズ・フェロウシップ日本支部年報』第27号(2004年10月)に論文「食欲不振の探偵-『マーティン・チャズルウィット』」として発表した。 ディケンズ作品に散見される疑似科学的な主題を、当時の雑誌や新聞におかえる超自然的な現象をめぐる言説と対置させ、より文化的な背景の中にテクストを読み込む作業を続けながら、ポストモダン以降の作家の作品群に見られるディケンズ的な方法論や疑似科学的な主題の比較検討にも着手した。その成果の一端として、イギリス現代作家ピーター・ケアリーの『ジャック・マッグズ』を、ディケンズの『大いなる遺産』と比較し、そこに読み取られる物語の衆評やポストコロニアリズム的な戦略たついて考察し、「ディケンズの亡霊-『ジャック・マッグズ』は何を書き換えたのか」というタイトルの論文として、島根大学『外国語教育センター・ジャーナル』に掲載予定である。
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