本年度は、2つの観点からパスカルへアプローチした。 (1)パスカルの流体静力学について パスカルと非常に近しい関係にあったロベルヴァルは、さまざまな実験を通して、空気の弾性という性質を把握するに至った。パスカルは、この科学上の成果に対して、直接的に言及することはないが、しかしながら、これを自らの自然学体系の中で、適切に説明付けようと試みていたことを、とりわけ『流体の平衡と大気の重さ』にあらわれた概念装置やレトリック(説得術)に注目して分析した。この研究は、論文としてはいまだ公開していないが(6月刊行予定の研究成果報告書で公表予定)、すでに科学史学会の大会などで報告している。 (2)近代初期におけるunite概念の研究 16世紀後半から17世紀前半において、unite(単位)の概念がどのように再構築され、解析幾何学などの数学や、幾何学的自然観の基礎づけなどにむけて活用されたのかという関心のもと、ステーフィンからパスカルに至るunite概念を検討した。当初予期していた以上の問題の規模の大きさのため、本年度に公表した論文については、メルセンヌとデカルトを中心とした分析に、研究対象を絞らざるを得なかったが、これによって、より複雑なunite概念を保持していたと思われるパスカルにアプローチする、具体的な問題設定と議論の枠組みを構築することができたと考えている。
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