本年度は、まず『京報』、『民国日報』などの、1920年代の北京における代表的な新聞や、また曦社(李健吾・蹇先艾らが参加)が発行した同人誌である『シャク火』などのマイクロフィルムを購入し、その資料整理と読解とを進めた。そのほかにも、『蹇先艾文集』(貴州人民出版社、2004年)などの資料も購入した。これらの資料は、1920年代の北京における文学青年たちの、文学結社結成による活動と、散文詩の発展とを解明するにあたって、基礎的な資料となるものと思われる。 当初、本研究計画において、当時青年の間に人気があった詩人であり、緑波社・『晨報・詩鐫』の主要メンバーであった于コウ虞の著作目録作成を進める予定であったが、2004年9月、解志煕・王文金編校『于コウ虞詩文輯存』(河南大学出版社)が出版されたため、同書の入手を待って、計画の再検討をしたい。 現在は、上に述べた購入資料を生かしつつ、本研究のいまひとりの主要対象である沈従文の「北京之文芸刊物及作者」の翻訳・訳注の作業を行っている。「北京之文芸刊物及作者」は、沈従文が、一人の文学青年・職業作家として、当時の北京で発行されていた各種の文芸刊行物を紹介し、その特徴を論じたものであり、沈従文の文芸思想の形成を論じるうえでも、また当時の文学青年たちの動向を窺ううえでも、きわめて重要な意味をもつ評論であると思われる。なお、この翻訳・訳注の成果は、今年10月発行予定の沈従文研究専門誌『湘西』にて、発表する予定である。 このほか今年度は、10月8日に「中国現代文学研究者の集い」(於二松学舎大学)において、「日本における沈従文研究」と題して口頭報告を行った。
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