平成17年度は、金代(1115-1234)に登場した字書である『群籍玉篇』(1188成立)と、韻書である『新刊韻略』(1229成立)に着目し、以下二つの作業を並行して行った。 『群籍玉篇』については、その書中に引用されている字書資料の性格また資料間の相互関連を窺う事を目的に、現存する同名の資料との内容的合致の有無などの観点から、全書の網羅的な調査・検討を行った。その結果、金代に通行していたと思われる字書や韻書については、内容的にみて資料間の相互関連が予想以上に密接であること、また書名は同じであるが現在知られるそれとは別の一書であるらしい資料が存在していたこと、またどの資料を重視しているかという点について、金代の場合には他の時代とは異なる部分があることなど、少なからぬ事柄について従来にない新たな知見が得られた。この調査の結果については、論文「『群籍玉篇』にみる金代通行の字書・韻書」として公刊した。 また『新刊韻略』については、その基づいたとされる先行韻書『廣韻』(1008成立)との全面的な比較作業を行った。この作業により、従来指摘されてこなかった『廣韻』との数々の差異点が明らかとなり、また『廣韻』のみならず同時代資料を初め他の複数の字書・韻書資料を編纂に用いたらしきことが窺われる特徴を見出すことができた。この検討結果は、関連諸説への自己見解を付して、論文「金・王文郁『新刊韻略』について」として公刊した。 (以上/約600字)
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