研究概要 |
今年度は、二度に亙る現地調査(上海)と一回の国内研究交流(大阪)を行なうとともに、現地上海において関連の演劇資料などを発見、購入することができた。 滬劇の形成期についての研究は、前年度より継続中であり、現地研究者の周良材氏の研究成果を踏まえて、論文「早期滬劇演目への視点-周良材氏の研究を中心に-」(『広島経済大学研究論集』第28巻第1号2005年6月)にとりまとめた。それ以降の都市における滬劇の上演状況についても『新世界』の記事調査を含め、各種資料にあたり継続的に調査中である。来年度にはデータベース化に着手したい。『申曲日報』のデータベース化については順次進めている。 上海図書館での調査では、49年の新中国建国前後における滬劇の状況を示す史料を閲覧・複写し、滬劇が新政権の下でどのような上演を経験していったのか、という点を中心に分析した。その結果、新中国建国直後の数年間は、まだかなり自由な雰囲気の中で、民国期からの流れを汲む上演活動が行なわれていたこと、一方で、新文芸工作者など、伝統劇とはゆかりのない人物が滬劇の「演出」に関与していた(させられていた)実態などについて、一定程度明らかにすることができた。滬劇が、民国期における形成・繁栄期から、建国後、政治の道具として硬直化するまでの、曖昧な期間の上演活動の実態把握は、当該研究にとっても重要であり、今後も継続的に研究していく。なお、当該時期の滬劇上演に関わる研究成果を「滬劇の『導演』-『羅漢銭』とその周辺-」(『中国文学研究』第31期,早稲田大学中国文学会;印刷中)としてとりまとめた。
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