本研究は、音響分析の手法を用いてインドネシア語のアクセント・イントネーションの分析を行なうことを目的とする。 平成16年度は、とりわけ存在詞adaを用いた存在文のについて、統語構造および情報構造の2つのレベルを念頭に置き、それらがイントネーションにどのように反映されるか、という点に着目して研究を進めた。 インドネシア語の文は一般的に[主語-述語]の構造をとると分析されるが、存在文はこれとは異なる構造を持つと考えられる。そこで、存在詞adaを用いた存在文(以降:「ada存在文」)の用法について、先行研究を批判的に検討した。併せて、Halimの提唱するインドネシア語におけるイントネーションの役割すなわち[主題-評言]を明示するという機能をada存在文に対して適用した。その一方でインドネシア語のコーパス作成を行い、得られたコーパスからada存在文を抽出し、統語構造および情報構造の観点から分類した。コーパスから得られたada存在文をインフォーマントに読み上げてもらい、その音声データのピッチ曲線を抽出し分析することによりイントネーション型を検討し、Halimのイントネーション論に基づき考察を行なった。 その成果は「インドネシア語ada存在文のイントネーションに関する一考察」と題して2005年3月に刊行された。 今後は、上記の研究を踏まえ、様々な文型に対してさらに幅広くイントネーション研究を進め、またインドネシア語におけるアクセントの機能についても併せて研究を行なう予定である。
|