本研究は、音響分析の手法を用いてインドネシア語のアクセント・イントネーションの分析を行なうことを目的とする。 平成17年度は、いわゆる名詞文のイントネーション分析を中心に研究を進めた。名詞文とは、文中の述語が名詞もしくは名詞相当句からなる文のことをいう。インドネシア語、とりわけ口語では「AはBである」という同定文でコピュラを用いず、主語と述語がそれぞれ名詞(句)のみで文として成り立つ。そのため主語と述語の判別にイントネーションが非常に大きな役割を果たすと考えられ、先行研究とくにHalimの言及はそのことを示唆するものである。 研究方法としては、インドネシア語コーパスの作成を昨年度に引き続き行ない、文型に基づいて構文の整理を行なった。その一方で、本学21世紀COE「言語運用を基盤とする言語情報学拠点」において公開されているインドネシア語会話モジュールの中から名詞文を抽出してそのイントネーションを音響音声学的に分析し、Halimなどの先行研究を踏まえながら考察を行なった。その成果は"An Acoustic Study on Intonation of Nominal Sentences in Indonesian"と題して本学21世紀COEの研究報告書の一部として2005年12月に刊行され、同文は2006年に刊行される研究書にも掲載される予定である。また、著書『インドネシア語のしくみ』においても、その一部に本研究の成果が生かされている。 今後は、上記の研究を踏まえ、様々な文型に対してさらに幅広くイントネーション研究を進め、またインドネシア語におけるアクセントの機能についても併せて研究を行なっていく。
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