本年度は、現地調査を一回(二週間)行った。内容は以下のとおり。 一、ショオ語海豊:方言の語彙記述調査:2003年3月に出版した『畭語海豐方言基本詞彙集』を基礎に、将来の辞書編集に向けて、語彙量を拡充するための記述調査を行った。同時に、本研究の目的である、ショオ語四方言比較研究のために必要な語彙項目を選定し、海豊方言の音形を整理あるいは補充した。来年度以降は、この語彙項目を基に他方言の語彙調査を進めることになる。 二、ショオ語海豊方言の物語の採録とその語彙・文法の分析:2001〜03年度に引き続き、ショオ語海豊方言の物語を記述・録音した。これにより、単なる語彙項目調査・例文調査では得ることが難しい類義語のニュアンスや様々な文型について記述することができた。 三、ショオ語他方言地域の現地状況調査:今回はじめてショオ語が話されている全ての村を訪問することができた。具体的には、増城市正果鎮(三か村)・博羅県横河鎮瞳背(三か村)・恵東県増光鎮(三か村)・恵東県多祝鎮(一か村)・恵東県大嶺鎮(二か村)・海豊県鵞埠鎮(一か村)である。これらの村では、社会言語学的調査および文化人類学的調査を行い、現地の歴史・社会・産業などの情報に加え、ショオ語話者人口(合計約1500人)や漢語方言とショオ語の併用の状況などに関する知見を得ることができた。 このほか、本年度の研究成果として『しょお語中的漢字音層次初探』(『東方学報京都』第77冊に掲載予定)の執筆が挙げられる。本論文では、借用語と借用字音の区別を行うことを主張し、ショオ語海豊方言における漢字音の整理とその由来の分析を行った。
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