本年度は、以下のことに取り組んだ。 1.これまで、「漢語サ変動詞の意味・用法の記述的研究」がどれくらい行われてきたかを調査した。具体的には、宮島達夫(1972)『動詞の意味・用法の記述的研究』(秀英出版)の目次にあがっている動詞を語種の観点から分類した。その結果は、和語動詞(あう、あえる、……)が689語、漢語サ変動詞(哀願する、依頼する、……)が51語である。この数字を見ても、「漢語サ変動詞の意味・用法の記述的研究」が不十分であることがわかる。 2.「売ることを表す漢語サ変動詞」のように、いくつかの意味グループを設定し、『分類語彙表(増補改訂版)』などを参考にしながら、その意味グループに入ると思われる漢語サ変動詞をピックアップする作業を行った。設定した意味グループは、「売ることを表す漢語サ変動詞:販売(する)、売却(する)、市販(する)、……」、「建てることを表す漢語サ変動詞:建築(する)、建設(する)、建造(する)、……」、「助けることを表す漢語サ変動詞:救助(する)、救出(する)、救済(する)、……」、「持つことを表す漢語サ変動詞:所持(する)、所有(する)、保有(する)、……」などである。そして、それぞれの漢語サ変動詞の実例を新聞などから集める作業を行った。 3.「売ることを表す漢語サ変動詞」の分析から取り掛かった。その分析結果は、小林英樹(2005)「漢語サ変動詞の意味・用法の記述的研究-「販売(する)」、「売却(する)」などをめぐって-」(『語学と文学』41)として、まとめることができた。現在は、「建てることを表す漢語サ変動詞」、「助けることを表す漢語サ変動詞」の分析に取り掛かっている段階である。
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