鎌倉時代成立の文献に認められる複合動詞語彙を蒐集してデータベースを構築し、平安時代の複合動詞語彙との共通性・差異性を明らかにすることを目的として研究を行った。 本年度は調査文献の選定と複合動詞の蒐集と入力作業を中心とした。また、データベース作成の過程で課題となる複合動詞認定の問題について、広く文法・語彙の分野の先行研究を踏まえて課題の分類・整理を行った。具体的には、接頭辞・接尾辞を構成要素に持つもの、構成要素間に敬譲の補助動詞や係助詞・副助詞を介在するものについて、また構成要素間の意味的関係による複合動詞の分類方法についての問題の整理を行った。 調査対象文献の選定では、鎌倉時代成立の文学作品の中から、現在までに索引・注釈書の存する文献12文献について一次調査・入力を終了した。 その過程において、平安時代和文における複合動詞との比較分析を行い、時代や文体・ジャンルの違いが複合動詞にどう反映しているかという通時的観点からの考察を行った結果、概観ではあるが (1)平安時代和文独自の複合動詞群 (2)平安時代和文には見られない複合動詞群 (3)平安時代和文とは意味用法が異なると思われる複合動詞群 の3種に分類できることが明らかとなった。 来年度はデータベースを完成させ、より具体的で詳細な意味用法の比較考察を行っていく予定である。
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