研究概要 |
本研究の目的は、「表示的モジュール性」に基づいて、統語論中心主義の「移動」よりは「対応規則」の方が、英語の例外的構文の特性を適切に記述できることを明らかにすることである。本年度の研究成果として、松山はEnglish Linguisticsに"The N after N Construction : A Constructional Idiom,"を公表した。この論文は、car after car went byのようなN after N表現が示す統語と意味のミスマッチを考察した。松山は、この構文が、統語的に単数であるものの、意味的には複数であるという形式と意味のずれを示すこと明らかにし、このミスマッチを捉えるには「移動」よりは「対応規則」のほうが適切であることを主張した。この論文で提示した例文のいくつかは、Ray Jackendoff教授の"Construction after Construction" (to appear in Natural Language Linguistic Theory)に引用されている。 また松山は、英語語法文法学会(2004年度10月23日名古屋大学)のシンポジウムの講師として『N after N表現の文法化とイディオム化』を発表した。本発表では、コーパスを活用しN after N構文に対して通時的・共時的な考察を加えた。通時的には松山は、N after N構文について17世紀から20世紀までのデータを調査し、当該構文の名詞が独立した構成素であることを示す証拠を17・18世紀の文献に発見した。また共時的には、コーパスを活用しNPNのタイプ毎の生産性を調べた。その結果NPNは、生産性が高い「構文的イディオム」と生産性が低い「語彙的イディオム」の2つのタイプがあることが判明した。この研究発表の内容は、2005年11月刊行予定の『文法化-新たな展開-(仮題)』(秋元実治,保坂道雄(編)、英潮社)に公表される予定である。
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