研究概要 |
本研究は,各言語における複合名詞句(名詞+名詞の2形態素で構成されるもの)の語構成のルールを,言語学的アプローチと共に,第二言語習得のアプローチとからめて対照研究する事を目的とする。平成16年度は日本語の複合名詞の基礎調査と外国語の複合名詞の基礎調査(英語、中国語、韓国語、タイ語、マレー語)を行う計画であったが、国立国語研究所が作成したアジア10ヶ国における日本語学習者の作文データベースが本研究に有効であることが明らかになったため、当初の予定に加え更に対象言語を増やし,合計9ヶ国語(+モンゴル語,ヒンディー語,クメール語,ベトナム語)について基礎調査を行っている。 基礎調査の結果,語構成については(1)修飾-被修飾の語順となる言語(例:日本料理)と(2)被修飾-修飾となる言語(例:料理日本)に分けられ,日本語,韓国語,中国語,英語,モンゴル語,ヒンディー語が(1),マレー語,タイ語,ベトナム語,クメール語は(2)となることが分かった。また「日本の料理」のように「の」に相当する語を入れる場合であるが,(1)基本的に「の」を入れ,限定された条件において「の」が省略できる言語,(2)基本的に「の」を入れず,「の」を入れる場合が限定されている言語,(3)その他,に分けられることがわかった。日本語,中国語は(1)であり,タイ語,ベトナム語は(2),英語,韓国語は(3)にあたると考えられる。また,母語が学習者の習得にあたえる影響についても基礎調査(タイ、ベトナムについては実地で聞き取り調査を実施)を実施したが,その結果,(1)母語の正の転移が見られる言語,(2)負の転移が見られる言語,(3)どちらも見られない言語がある可能性が明らかになった。(1)は中国語,韓国語,ベトナム語の漢語圏,(2)は上記の漢語圏とタイ語,カンボジア語などの非漢語圏,(3)は英語,ヒンディー語である。 来年度は本年度の結果を基に更に詳細な分析を行い,習得との関連性についても具体的なアンケート調査によって明らかにしていく予定である。
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