研究概要 |
日本語教師養成機関等で行っている「音声学」の授業内容および使用教科書の分析を行い,それが音声教育学的な視点から,どの程度有用な知識となりうるかを批判的に検討した。具体的には,全国の大学機関等におけるシラバスでWeb上でアクセス可能なものについて,指定教材をリストアップして内容を調査した。また,そのシラバスで,教科書以外の指導内容についても調べた。その結果,日本語教育学的にとりたてて重要と思われない項目,具体的には,「音声学とは何か」「言語音の定義」「(調音器官以外の)音声器官の名称」「声門の状態」「D.Jonesの基本母音」「特殊拍の異音」「音節の定義」「頭高型・中高型・尾高型」「イントネーション分類」「強庚強調」「相補分布」等などが数多く含まれていることがわかった。この検討内容および提言に関することは,現在印刷中の松崎寛「音声・音韻」『講座日本語教育学』第6巻において詳しく述べた。 また,平成17年度の実践研究を実施する前段階としての予備調査を行った。具体的には,ひろしま国際センターにおける海外教員研修の「発音」担当教員1名に対し,授業の参与観察および半構造的インタビューを行った。その結果,与えられた教材を再構築して教えるべき課を取捨選択する作業は非常に難しいこと,音声要素の「積み上げ」に対する理解に困難が伴うこと等がわかった。平成17年度は,本年度の研究で明らかになった「音声教育学的な基礎知識」が現場での指導にどれだけ有用なものとなりうるのか,音声指導実践をアクション・リサーチ的に記録しながら検討する予定である。
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