今年度は、音声習得と年齢の関係、および、音声習得と情報処理の個人差の関係について、理論研究と実証研究をもとに追究した。小学生段階では、認知発達と言語発達の途上にあるため、母語同一化音声処理が無意識的に最も起こりやすい。さらに、外国語音声の母語同一化処理が無意識的に行われると、深く定着してしまうため、後からの修正と克服が難しいことが分かった。従って、小学校段階の音声指導では、母語同一化音声処理が起こりにくい指導方法と環境が重要であることが分かった。一方、成人外国語学習者にも母語同一化音声処理は見られるが、意識的訂正と訓練により克服可能である。いずれの段階の学習者でも、情報処理の個人差、すなわち、視覚処理優勢型と聴覚処理優勢型がある。視覚処理優勢型の学習者には、音声のみの提示では異なる音声の識別が困難であるため、スペクトログラムなどを用いて、音声を視覚的に提示すると、より個人差に応じた木目細かな指導が可能になることが分かった。こうした研究成果を、Language Processing and Foreign Language Pedagogy : The Place of Phonetics in English Language Teaching(全132ページ)文部科学省科学研究費補助金研究成果報告書第1部としてまとめ、広く公開している。
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