本研究は目標は、19世紀後半期アメリカン・オリエンタリズムの成立と展開について解明し、それが同時代におよぼした影響を、アメリカあるいは日本一国の枠組みを越えた比較史・文化交流史的観点から分析することであった。研究の焦点となったのは、当時の日米文化交渉を通じたアメリカン・オリエンタリズムの形成において、極めてユニークな役割を果たしたアーネスト・F・フェノロサである。アメリカン・オリエンタリズムとは、「他者」としてのオリエント(=当時のアメリカにおいては極東、特に日本を指す)を契機としてアメリカの想像力が産み出した言説であり、そうした言説の成立に際し、フェノロサが果たした役割と、アメリカン・オリエンタリストとしてのフェノロサの思想の特色を明らかにすることに、研究の主眼を置いた。 論文化された研究実績としては、(1)「預言者・改革者としてのアーネスト・F・フェノロサ-ボストン美術館在任時の活動を中心に-」(『山形大学人文学部研究年報』、第2号、平成17年2月)、(2)"Art as a Reforming Force of Culture : Ernest F.Fenollosa and the Utopianization of East Asiatic Art"(『比較文化研究』No.67、近刊)の2点が挙げられる。(1)は日本比較文学会2004年度東北・北海道大会(2004年9月4日、青森市)における口頭発表内容の改訂増補版であり、(2)は平成16年10月9日、カナダのトロントで開催されたThe Society for Utopian Studies第29回年次総会での口頭発表内容を、論文にまとめたものである。
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