今年度も、昨年度に引き続き北陸地方および中国地方の荘園制関係史料の収集に努めた。 北陸地方では新潟県東部、俗に〔阿賀北〕と呼ばれる地域を対象に、文献史料のみならず、絵画史料の調査を行ない、それらの成果を踏まえた上で現地調査を実行した。文献史料の収集については自治体史を通覧することによりかなりの進捗を見た。絵画史料については、胎内市教育委員会のお世話になり同市所蔵の絵図一葉を調査させていただいた。その結果、料紙構成や角筆線・裏書の有無など新たな知見を得ることができ、文献史料との新たな接点を見出すことができた。また、地名遺構などを手がかりとした現地調査から、やはり交通路と荘園制ないし武士団の活動の密接な関係を浮かび上がらせることができた。これは、昨年度備中国新見荘の調査で得られた知見とも合致する。 なお、補助調査として伊豆を中心とした史料調査も行なった。すなわち、〔阿賀北〕ほど荘園制が顕著には現われないこれらの地域で、交通路が果たした役割が具体的にはどのような形をとるのかを検討することにより、荘園制という仕組みが持った意味を再確認することができると考えている。 中国地方については、昨年度の備中国からやや地域を転じて美作方面へと史料調査の範囲を拡大した。昨年度の調査の結果からこれらの地域にはいまだに現地で採取すべき史料(文献史料を含む)が多く残存していることが確かめられたので、その補充調査を行なった。 さらに、今年度は昨年度来調査・収集を進めてきた各種史料の整理を手がけ、越後の史料の一部をサンプルにそのプロトタイプを試作している。
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