今年度は、まず昨年度前の成果を受けて、西国及び東国それぞれのフィールドにおける文献史料の補足調査を行なった、その結果、西国に関しては矢野荘における関係資料のピックアップ・整理を完了した。東国に関しては伊豆における関係史料の整理を完了し、その成果は『伊東市史』としては公刊された。いずれのフィールドも、荘園・悪党の展開・形成に果たす交通路の役割が多きいことを再確認したことは大きな成果である。ただし、伊豆の場合、同じ交通路でも水上交通路が果たす役割が大きい。これまで陸上交通路の役割を想定し、地図上に史料や関係地名などを落す作業を進めてきたが、水上交通路の場合はこのような方法ではじゅうぶん調査の成果を反映することができないことが明らかとなった。水上交通路に関する調査成果の発信方法については今後新たに検討すべき課題となる。 以上の文献調査および各種の現地調査の成果を反映する手段・フォーマットを研究・検討した結果、地図ソフト「カシミール」を援用することが有効であることが判明した。カシーミール」は地図情報および高度情報が数値化されており、専用ソフトをつかって閲覧すると、地形情報を三次元的に把握することができる。これに復原された中世の交通路を地図化して表示し、関係ポイントに史料情報(文献史料や遺跡情報など)を埋め込めば、荘園と交通路、さらにはそれを取り囲む地域といった、文字では表現しきれない空間を三次元的に発信することが可能となった。昨年度までに試作した越後をフィールドとしたプロトタイプを修整し、「カシミール」上で再現した。 以上の成果をweb経由で発信することを検討したが、「カシミール」はスタンドアローン環境で設計されているため、三次元的な情報を発信することは現段階では難しいこと判明した。
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